Kirk Covington

Reality Check

Reality Check / Tribal Tech

カーク・コビントン。

トライバルテックっちゅうのが凄いっていう話はなんとなく聞いていて、「Reality Check」というアルバムが出たときに初めてちゃんと聞いた。このアルバムはドラマーがカーク・コビントンに代わって2枚目だったか。ここから私のカーク病が始まった。ウェックルやビニーも素晴らしい。しかし、聞きすぎていたのだろう、もうひとつなにか違ったパワー感とサウンド、そしてフレーズのバランスを持ったドラマーはおらんものか...。もちろん自分がそうなれれば凄いのだがね、なんていうことを思っていたところだったのだが、そんな気持に大きく風穴を開けてくれたのが、カークのドラミングだった。

ドラムがメロディを、ハーモニーを歌いながら、構成感とダイナミクスをリードする。そうしてバンド全体の音の密度をうまくコントロールする彼のドラミングは、計算が表には見えない、実に自然に曲を奏でているものだった。また、奏法が、所謂フュージョンドラマーにありがちなルーディメンタルなものやリニア的なものの範疇を軽く飛び越えていて、フレーズが実に自由なのだった。

こんなドラムが理想だなぁ、一体どんなやつなんだろうと思いつつ「あのトライバルテックのドラマーいいねぇ」「え、あぁ、なんていうんだっけ、彼」「えっと、あの、なんちゃらスコビッチ、みたいな名前だったっけなぁ」「はぁ?そんなんだっけ」なんていうような、すげーなぁと思いつつもクレジットもろくに読まず語っていた私。で、2〜3週間聴いて、こりゃホントに好きになってきたわ、と思ったところでようやくCDのジャケットを見ると、カーク・コビントンとある。「なんだ、なんとかビッチでもなんでもないじゃん(笑)。なんか、そんなドラミングからはそんな名前が似合いそうだと思ったんだけどなぁ」...。

そんなこんなで、しばらくは彼をさして「スコビッチ最高!」なんて言っていたのだ。で、それから3〜4年だろうか。ドラムマガジンの打ち合わせの時などことあるごとに、編集長K氏に「カーク最高でっせ、近いうちにどーんと出てきますよ」なんて言っていたら、トライバルテックが来日決定!ドラムマガジンでインタビューさせてもらえることになったのだった。

インタビューはMIジャパンで行われ、その後渋谷のClubAsiaで行われる本番も写真を撮るということになり、リハーサルから本番まで、楽屋もステージもずっと見させてもらいました。セッティングしながらデカイ声で歌ったり、楽屋でストレッチしたり叫んだりと、とにかくエネルギッシュな様子に、ただただ翻弄されるばかりでした。あぁ、そういえばスコヘンとスコットキンゼイとカークが話し始めるとやたら「G4」を連発していたなぁ。欲しかったのだろうか。

たぶん、トライバルテックとしては日本初の演奏ではないかと思われるその日のライブでは、フュージョン濃度満点のファンがおしかけていた。曲は、Reality Checkや、FaceFirstからの曲が多く、かなり濃いステージでした。演奏はとにかくものすごく、90年代の終わりに、まだこんな力の入ったフュージョンバンドが存在していたのか〜と嬉しくなってしまった。ステージ上の時空間が歪んだのでは、というほどに強力な嵐のような演奏。MCはほとんどなく、サウンドチェックの時に彼らが言っていたところの"One Long Stage"で、次から次へと爆発的に演奏してました。

カークの生音は実に、会話をすれば消えてしまいそうなピアニシモから、怒濤のフォルティシモまで、ダイナミックなものでした。都合のよいことを言わせてもらえば、自分の考えていたドラミングの理想像に実に近い。カークはピアノを演奏し、歌も歌える。トライバルテックでは食えないので、ブルース弾き語りなんかでツアーするという噂を聴いたこともあったっけ。

Kirk Covington & Makito

1999年カークと

( 2005/12/03 )