2)自炊と食材探し

私は普段はコーヒーや酒をがぶ飲みして味の濃いものや激辛ものも食べまくるのだが、生まれつき体が丈夫でないこともあって、体調が悪いときには生姜湯を飲んだり消化によいものを選んだり、朝にリンゴを食べるとか、ちょっと気にすることが多かった。なにが言いたいかというと、自分が食べるものに関心がなかったというわけでもなく、ただそれは味的な好みよりも、体調との関係や、なんとなく体に良いと言われているものを少しとってみたりという程度のものだったが。子供の頃は好き嫌いが激しくて、小学生のある時期はご飯にふりかけ、それ以外は気持ち悪くて食べたくない、ということもあった。今になってそれは、実は当時のブロイラーの品質が悪かったらしく、鶏の皮を食べると気持ち悪くなって吐いていたことで、オカズに手を伸ばすのがおっくうになっていたというのがわかってきた。前述した「嫌な感じ」というのはそこから来ている。

子供の頃、家に帰ると、お菓子などがあればそれを、無いときには台所からなにやら引っ張り出して、ともすれば煮干をかじりながら牛乳を飲んだりしていた。なんとも気持ち悪い組み合わせだが、煮干というのは味が深くてうまい。噛み締めると力強く味が出るし、喉が渇くと牛乳を飲んでいた。それのおかげで骨は強くなったのかもしれない。

また、そういえば大学生の時にバイト先でボーナス代わりに“ししゃも”だか“いわしの丸干し”だかをひと箱もらったことがあって、家に持って帰ると「あら、これはいいはねぇ」と言いながらおフクロが焼いてくれたことがあった。バイト後で腹ペコでもあったが、あれは実にうまかった。働いて、飯を食うというのがこんなに素晴らしいのかと思うほどだった。次の日にも焼いてもらってわくわくして食べたが、同じ感動は無かった。単純に自分が期待しすぎていたのだろうと思っていたが、今考えれば時間が経って味が落ちていただけだろう。

話はそれたが、そんなこんなで、忙しさに任せて適当にしていた食事を、体調をいたわる意味も含めて、少し自炊でもしてみようという気持ちが出てきた。そうしてひさしぶりに自分でご飯を炊いてみると、炊飯器から出てくる香りや、煮干でとった出汁の香り、近所で買ってきた豆腐の香りが、実に心地よいものとして体に染み入った。あぁ、これでよかったんだなと思い、それからは時間のあるときにはスーパーで食材を買ったりするようになった。

( 2005/12/25 )