3)食材選び

スーパーで食材を選ぶのは、なかなかに楽しい。広い店内にあれこれと立ち並び、選び放題である。仕事のギャラや経費の支払い、楽器やコンピューターなどの値段ばかり目にしていると、スーパーに並んでいるものはほとんどが安い値段に感じられ気軽さを感じたほどだ。いくつか店をまわって、こっちが安いと言っては手に取り、八百屋に白菜が積まれていると、勢いよくふたつもみっつも買ってみたり。しかし、家に帰って料理をしてみると、なんだか違和感を感じることがあった。見た目にはよい野菜だが、食べてみるとうまくない。そのときは自分の調理がよくなかったのだろうくらいにしか考えていなかった。うまいもんも続けて食えば飽きる、と思っていたのだ。

その後、仕事で東京を離れたり、旅行したときにおみやげ代わりに野菜や味噌などを買うようになった。そこで、もうひとつ実感した。そもそも値段に関係なく、野菜にも決定的な旨い不味いの差があることを。それも、自分が思っていたレベル以上の。まずい食材は確固として存在し、とことんまずいものもあるということ。そして、前述した「嫌な感じ」というものが、その食材そのものから来るということに。スーパーで買った野菜が不味く、地方で買ったものがすべて旨いというほど単純な図式ではないが、要するに買うときに自分の目で見抜かなければダメなんだと。たとえば、スイカを選ぶときに叩いてみたり持ってみて重さで判断したりするが、そういう個体差の話ではなく、その野菜がどこでどうやって作られたか、ということを意識するようになった。ま、普通に教養のある人ならば皆わかっていることなのだろうが、私は30にもなってそのことを実感させられた。

( 2005/12/25 )