天の岩戸(三重県)

水です。

水。

美味しい水。

ヤマハの音楽施設に合歓の里というのがありました。ヤマハ・ドラマーズ・キャンプとか懐かしいですね。ひところ、お仕事でちょくちょく行っていたのですが、ある時、帰りに伊勢神宮に寄ってみようと思いました。伊勢神宮に向う途中、タクシーの運転手さんに「キレイな川とかないですかね」と言ってみたところ「あそこに行って見ましょう」といって「天の岩戸」に連れて行ってくれました。合歓の郷近辺から伊勢神宮までを結ぶ伊勢道路をちょっと横道に入ったところでした。

車をとめて、山の中を歩いていくと清水が湧いています。ここが天の岩戸です。このときは私のほかにドラマー二人が一緒でした。そのうちの一人、岡光君と私は「水がうんめぇ〜」と言って狂喜乱舞。ごくごく飲みまくりました。なんというか、本当にびっくりの味です。そして、調子に乗った私はこの水が流れてできた清流の下流の方で、素足で水に入ってみたのですが。

足が喜んでいる...。

水は冷たかったのです。こういう場所で足を入れたりすると、冷たくて肌がキュッとしまる感じになることを予想していました。ところが、足が水と一体化しようとしているような感覚。ぬれていることに全く不快感を感じないのです。心地よい毛布にくるまっているような、いつまでもこうしていたいという感覚。岡光君も同じことを感じていて「うおお!すげ〜!足が、足がぁぁぁ」と二人で叫んでおりました。水とは、本来こういうものではないのか。今まで体験した水の中で、もっとも神秘的にうまい水でした。

このときのタクシーの運転手さんには本当に感謝しています。伊勢神宮までの間、いろいろな話もしてくれました。伊勢道路沿いにいくつか川が見えましたが、あのあたりは侵入禁止になっているということで、川の様子が「人の手」を感じさせないのです。手付かずの自然というのは、人間が生きていくには厳しく、都合の悪い面もあります。しかし、あのような形で残っていることに深い感慨を覚えるのです。タクシーの運転手さんに、このあたりは住みやすいですか〜と聞いてみると「東京のように便利ではないけれど、本当にこの土地を気に入っていますよ」そんなことを言ってくれました。伊勢神宮についてから、伊勢うどんやてこね寿司を食いながら「あの運転手さんの一言はキイタな〜」とつぶやく私達。あの言葉は自慢でも諦めでもないものでした。

結局、伊勢神宮ではなくて、おかげ横丁で食べまくって、すぐ横の五十鈴川で岡光君と二人でパンツ1丁で泳いで、酒呑んで終電に駆け込んで帰りました。今となってはよい思い出です(笑)

五十鈴川にて。手前を泳いでいるのが私。

( 2006/02/18 )