7)うまいもんとは何か

 うまいもんって何だろうか。

 食べるものに気をつけることと、自分の好みの味ばかり食べるのは意味が違ってくる。ポテトチップスが好きで、最高にうまいと思っていたとしても、そればかり食うというのは問題だろう。私が思う「うまいもの」とは、体や心に響く食べ物という基準がある。

 テレビのグルメ番組を見ていると、若いタレントが「やわらか〜い」を連発して、食べ物の美味さを表そうとしていたりする。食感は大事な要素だが「やわらか〜い」とか「ジューシー」ばかり連発するのを見ていると、不要な閉塞感からこちらが苦しくなってくる。まぁ、食べ物のうまさを言葉にするのは難しさもあろうけれど。

 霜降りの柔らかい肉も結構だが、赤身の堅いところをガブリと食らうのもまた肉の醍醐味ではないか。プリプリした刺身もいいが、熟れた刺身もいいし、カチカチになった丸干しの美味さもある。甘味の多い食材もいいが、苦みや酸味もまた奥が深い。粉っぽさや筋、繊維質というのも、それでしか得られない味の世界もある。

 私は、体調が悪いときには、梅干しや生姜、レモン、林檎などをとることが多いのだが、こうしたものが「体に効く感じ」というのがある。私の思うところの「うまいもん」は、そうした「体に効く」感じがあるし、生きているということを実感させられる。嗜好的に味が好き、ということを超えた部分での、食べ物の「ありがたさ」を感じずにはいられないものだ。

 こうした「ありがたさ」がありつつも、味や触感、献立の組み立てのバランスのとれたものが真の「料理」であると考える。無論、自分などそんな料理を作ることもできないし、実は食べる資格もない、業を忘れて理想を並べ立てる愚かな人間なのかもしれないが。

( 2006/02/27 )