makito's voice

2000年06月20日
大阪

  • 大阪市立美術館で催されている「フェルメールとその時代」を観に行った。
  • もともと自分は大阪生まれであり、私の家に大学時代に下宿されていた先輩が高槻であったこともあって、大阪弁や関西というものには、なにやら記憶の根底で、親しみやすく懐かしい感じのするものである。
  • 午後1時に京都に入り、用事もあってちょっとうろうろしながら大阪へ。4時に梅田に着いて、4時半に美術館の入り口にたどりつく。なんで美術館に行くために出かけてきているのに、こんなに遅い時間に美術館に着いているのか。まぁいろいろあってこうなったが、かなり気が急く。
  • 今回のフェルメール展はかなり人気が高いようで、土日の展示時間は当初の予定よりも延長されている。日曜日ということもあってやはり混雑しているらしく、入り口では整理係がなにやらメガホンを持って案内を行っている。「本日のフェルメール展は大変混雑しており、ただ今の待ち時間は120分となっております...。」なんじゃそりゃ、展示時間が延長されて7時になっているはずだが、2時間も待ったら、ほとんど観られないのではないか!?
  • 次の日は月曜日、美術館は休刊日であり、火曜まで延泊してもいいが懐が寂しい。とりあえず行くしかない、フェルメールが俺を呼んでいる!120分待ちですがいいですか、払い戻しはできまへんですがいいですか〜、という切符売り場のお姉ちゃんに「あいあい、いいです」と切符をふんだくって中に入り、案内に従って美術館の方へ早足で歩く。待ち行列はなかなかにすさまじいものだった。植物園やらがある敷地内の、砂利の敷かれた広場に4〜5人の列が蛇腹のように折れ曲がっている。蛇腹と言うより大腸か小腸か。なんでもいいや。
  • 待つこと1時間半。列は思ったよりは頻繁に流れていったが、なにせ長い行列で、そうしてやっと美術館の前に来た。中に入ると、またもやフェルメールなどが置いてある展示室までが待ち行列。美術館のスタッフが5〜10分おきに少しずつ中に入れていっている。少しずつ進んでいくと、オランダ、デルフトの写真や、フェルメールの年表、また、今回の絵の運搬の様子を収めたビデオなどが流れていて、そんなものを眺めながら列は少しずつ進んでいった。途中、外で言っている時間と、中で待たされる時間がちがうぢゃないの〜、と大阪弁でまくしたてているおばちゃんもおりました。120分というのは、主宰者側とすればやや大袈裟に言って客の理解を仰ぐところだろうと思っていたけれど、美術館の中に入って、結局フェルメールの置いてある部屋に入ったときには実に120分経っていた。
  • やっとこさ本命の部屋に到着。とにかく人が多い。わんさと、芋洗いのように、絵の前で大勢の人間が左右に揺れている。そうして、合間に絵がチラチラと見える。ニューヨークで会った絵もいる。オランダから来ている絵も居る。全部で4点だったろうか。順番に観ようとは思いつつも、やはりなんといっても観てみたかった「青いターバンの娘」に足が向く。
  • 人混みをかきわけてじりじりと少しずつ絵に近づいていく。絵から3メートルというあたりで、ふっと、人混みの加減で目の前から絵を遮るものがなくなった。10年前、ニューヨークのメトロポリタンで、フェルメールはもちろん、著名画家の名前すら知らないで「あれ、なんかこの絵いいなぁ」と思ったのがフェルメールの絵だった。「少女」と題されたその絵を見た瞬間、目の焦点は絵の額縁の大きさにぴったり揃い、なんだか、絵からもてなしを受けているかのような気分になった。今回もまた同じ気分だった。ごく自然に、気取り無く、絵は、暖かく優しいオーラを発していた。
  • 絵は思っていたより白っぽく、淡い。悪く言うとファンデーションの濃い感じ(笑)。噂に違わず表情は素晴らしい。帰りの新幹線の中でこうして書いていると、あぁ、もっと長く滞在してゆっくり見たいところだと思うばかりである。しかしながら、やはり自分が好きなのはメトロポリタンにあるあの絵であるということも感じた。いつの日か、あの2枚を同じ場所で見ることができたら最高だなぁ。