makito's voice

2002年01月30日

訃報

  • とても残念なことだ。先日、久しぶりに時間がとれたので夕方過ぎに月島へ、大好きな岸田屋へ向かった。この店は自分にとって一番のお気に入りの場所である。モツ煮込みが旨い、魚が旨い、おにぎりとはまつゆが旨いというのもあるが、古くからの常連客がひしめく中でひとり熱燗をグビグビと呑み、他のお客さんの表情を眺めながら自分のことをゆっくり感じてみる、そんなことがとても大事であった。開店と同時に常連客でいっぱいになってしまうので、なかなか行けるものではなかったが、クタクタに疲れたときでも、今度時間が空いたら岸田屋へ行こう、なんて考えて気分転換になっていた。
  • 店に行くとシャッターが半分開いて、小さな張り紙がしてあった。店の中は電気がついていたので、あぁ今日は店を開けるんだな、とホッとした。最近は岸田屋のオヤジさんの具合が悪く、オヤジさん抜きで営業しているときに「生ものはできません」という張り紙がしてあることがあったので、モツ煮が食べられればいいかなと思って店の前に並ぶべく、ベンチに座ろうとした。しかし、目に入った、張り紙に書いてある事は、少し違っていた。
  • 岸田屋のオヤジさんは療養の甲斐なく亡くなられていた。張り紙にはしばらく休みますとあった。大袈裟な話しだが、目の前が暗くなる気持だった。あんな風にお客さんに愛される店はなかなかあるものではない。毎日毎日、何年も店を開け、多くのお客さんが訪れていたということは生半可なことではない。これから岸田屋がどうなるかはわからない。岸田屋の味がなくなってしまうかもしれないこと自体も悲しいが、なによりも、オヤジさんやおかぁさんが居て、お客さんが居るという、あの場所がもう戻ってこないことを考えると本当に残念でならない。