makito's voice

2011年01月07日
M.N

  • 昨日は表題のM.Nと豊橋は南栄の楽器店長Sと新年会をした。この3人はそれぞれ濃い付き合いではあるが、顔をそろえるのは初めてで、非常に楽しく濃い集まりだった。途中からは浅草楽器店重鎮のN尾氏が合流しさらに盛り上がる。そんな中、なにか空の上の方に飛んでいくような思いがあった。彼のことを書くと、なにやらそれはある種の宣伝的な匂いとか彼の活動のコンテキストに対してなにか決まったニュアンスを感じさせてしまうとか、安易な美談でもなければかといってお涙頂戴でも無いということがあり、今までも書かずにいた。が、昨日は心が動いたので書く。

    蕎麦

  • 前にも日記に書いたような気がする。目をつぶればすぐに出てくる光景。文京区のある坂道で授業を終えた学生たちが屯しているところでの会話。ちょっと猫背というか、腰の低い重心の安定した感じの彼が話しかけてくる。そのころ連載していた記事を読んでくれていた、というような話。優しい感じというか、演出の無い話し方。ストレートで、とくに器用な言葉使いではなくペースは速くなく、ちょっとトルクのある語り口つうか。良い時期だったな、思い返すと今でもそう思う。実はあんまり学生たちのことを深く見ることができる時期ではなかった。自分の状態もそうだったけれど、人数が多く授業の時間も限られていたので、個人的な話などするような状況ではなかった。しかし、なにか独特の熱い空気が流れていて、その流れの中で学生たちは揉まれていたように思う。自分はといえば、他の仕事で徹夜しまくって学校に行くようなことも多く、スティック振りながら白目向いて眠りそうになったりしていたな...(笑)
  • 細かいことは憶えていないのだが、あれこれしているうちに酒飲んだりするようになった。両国のほそかわでエビス呑んでうめ〜とか言ったり。彼はとあるバンドで活動していて、時々連絡をくれて一度ライブを見に行ったり...。そして今のバンドでの活動が始まり、デモCDとかを送ってくれていたのだが、ちょっとドラムの音が気になって、自分の機材を貸したりしていた。まぁなんというか、彼は気持ちの良いやつなのであって、ナイスガイというのだな。なにかを心得ている。信頼させる何かを持っているというか。実際のところ、自分は彼になにか期待をしているわけではないのだが、相手の懐に飛び込むのがうまいということなのか。自分はといえば、旨いもん食って旨い酒呑んでってことばかり偉そうに言っていた記憶もある。たぶん他に言うことがなかったのだろう(笑)。まぁそもそも学生時代からドラムはあれこれ言うことも無いし、なにか応援するとは言っても、知り合った数多のドラマー達に対する気持ちと同じで、活動がうまくいくと良いなと思っていた。
  • 蒙昧な回想はまぁこの辺にしておいて、昨日なにか結論的なものを感じたひとつの事がらについて。彼は以前から「教えることにも興味がある」といっていた。だいたいこの手のことをいう手合いはダメなのだ、という先入観が自分にはある。当時まだ20代、もっと活動し、もっと見るべき世界がたくさんあるだろう。おそらくそれは自分の連載を読んでくれていた彼のリップサービス的な意味もあるだろうと思っていた。「〜も興味あるんですよね」という言い回しは、自分がよく使う言葉でもあるが、ある意味もっとも自分を駄目にしてきた言葉だ。あれこれやりたい。こんなこともあんなことにもアイデアがある。そういうものは大抵結実しないのだ。ま、そういう風に受け取っていた。とはいえ、3年前の連載オファーの中にあった企画の中に「ここに登場してもらいたい」という気持ちが湧いた。教えるというよりは発信という形か。彼も活動的にしていたし、初めて会った時から感じていた独特な重心の安定感は誌面でも力を発揮するだろう。そして同時期に、目を見張る実力に感心させられていたK君と一緒にやってもらうことになった。そして連載終了の頃になると、彼は途方も無く上のステージへと上がっていっていた。認知度は遥かに上がり、ライブの動員数、チャートへのランクインなど、兆しとして顕れていたものがどんどん膨れ上がっていく。すごいものだ。

    場所替え。奇跡の4度目の正直。

  • しかし、この状況にあって昨日も教える的なことについての話になった。浅草の楽器店の重鎮店長も含め「いいじゃん音楽そのもので伝えられるんだから」という展開。しかし、なにかどうも様子が違うようではある。あぁこれはやはり言語が違うのかもしれない。彼は何をしたいと思っているのか。そうしてなにか感じられた。あぁなにかこういうことなのだなと。彼は「伝えたい」のだろうと思う。そこにピュアななにかがある。そしてこれは「展開」というものなのだ。自分もそうだった。目の前に来た「縁」のようなものに対して、どうやって自分の切り口で書くか。それはある意味、反目でもあったし展開でもあった。彼はそれを見ていたのだなと思った。まぁ考えて見れば自分の書いてきたことはすべてそれだ。だから彼はその「自分としての展開」をなにかを伝えるというステージでやり遂げるのだろう。彼は言った。「あれを読んでなければやめていたかもしれない」「何かの力を感じるもの」というようなことを。嬉しいことだ。俺の小さなアバンギャルドをキッカケに、彼は自分のやり方で増幅するのかもしれない。
  • チカラ。物事をどう適切に処理するかではなく、力をそこに発生させること。そう、赤本のタイトル候補も「ドラムのチカラ」だった。自分は合理的なものが好きで、たとえば昨日もフィール&ロジックはプログラミングを知っている人には理解されやすいという話になったが、この構造化とかProcedureみたいなものの展開というものが、なにやら自分の文章の方法論のひとつのようでもあるのだが、実は周囲の人はそんなことはどうでも良くて、自分でも気がつかず振り回しているチカラに意味があるのだろう。だから、自分で「これがベストバランス」と思ったものは、造形は良くてもほとんど死んでいたりする(笑)自分はそれが偶然はみ出ちゃった人。必要なときに出そうと思っても出ないという困ったところがある。これってある意味ハードルの設定なのだろう。ハードルの高さとベクトル。自分は実にその設定を自分でできないところがある。なにかできたことがあっても、なぜできているかは説明できないポンコツなのだ。彼はきっと自分の中からそれを抽出して増幅できるだろう。あぁ昇華していく。役目終わり(笑)お疲れさん俺!いやしかしそれが彼ならば何も言うことは無い。託して良いし、もはや口を出すものではないなと感じる。え?そんなの当たり前だって?そりゃまぁそうだ。
  • と、最近こんなことばかり書いている気がする。だいぶ打ち止めな感じではある。素晴らしい人達に感謝。さて楽しかった昨日の新年会はあっという間に26時。どうしようかと思ったが、意外に元気があったので2時間歩いて帰宅してみたが、この冬一番の冷え込みだったとかでさすがに寒かった。しかし歩きながら湧き上がってくる考えのようなものを風景に溶かし込んでいくというのは、なにか山登りでもしているような気分で爽快ではある。

    この晩は東京でも氷が張ったらしい。