makito's voice
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2012年08月03日
シンバル・チューニングその2

  • なにやら「シンバル・チューニング」というコンセプトめいた言葉を使いたかったのが見え見えな内容ではありますが、次はシンバルに少し手を加える方法について書いてみたいと思います。その1を読んでいないかたは、まずこちらを。
  • ここに書くことは、かなりデンジャラスゾーンに入ってきます。ちょっと工作という範囲ではありません。また、自分が気に入らないシンバルだからといって、なんでもかんでもいじってしまう人が現れることも望んではいません。シンバルを製作する行程には、火入れ、ハンマリング、レイジングなどがあり、その一部を出来る範囲を見極めながら行うようなことになってきます。工作全般、金属加工、工具の取り扱いについて自信の有る方、そして、シンバルに対する真摯な気持ちで自主的な判断のもとでの自己責任が前提となります。失敗したら全部お釈迦になる可能性もありますし、私も、クラックが入って通常使用ができなくなったものしかやっていませんが、それでも何枚もダメにしました。
  • シンバルの合金は硬く、バリやトゲのようになった部分であっさり手が切れます。革の手袋など分厚いもので保護したほうが良いでしょう。また、削った粉も吸い込まない方が良いでしょう。興味を持ったら、まず一度廃棄しかないような割れたシンバルで一度試して見れば、なかなか手ごわいことには気がつくでしょう。シンバルのメーカーやグレードによっても合金の硬さも違い、ウェイトによって加工の難易度も変わります。
  • 以下、あくまで冗談ですけども、くれぐれもライブのMC中とかに「ちっとシンバル気に食わねえんだよな」とか言ってトンカンハンマリングしたり、舞台袖にボーヤを待機させて旋盤で削るとかそういうことはしたらアカンて!w
  • では、破壊的手法を。


    Ⅱ)シンバルに手を加える方法

    2-1)シズルを取り付ける(シズル効果)
     シズルに関しては、ジャンル的にやはりジャズドラマー御用達というところでしょうか。シズル効果は1-4で書いたような方法でも得られますが、穴を開けてシズルを取り付ける方が音が自然で響きも長くなるように思います。また、シズル自体の素材や価格もいろいろあって、シズル自体にもヴィンテージものが存在し、やはり音はいろいろ違ってきます。
     シズルの取り付け方は、昔はエッジから1/4くらいの円周上につけることが多かったように思います。個数はシンバルのサイズにもよりますが、3〜4個から8個くらい豪勢につけるような場合もあります。その他、一箇所に3つくらい並べて取り付ける方法もあります。穴径は使用するシズルによって3〜4mmくらいでしょうか。シズルが軽く揺れるようにするべきですが、あまり大きく開けないほうが良いと個人的には思います。
     シズル自体はペンチ等で取り外したり交換したりできますが、穴は開けてしまうともちろん元には戻りません。中古のシンバルなどでこの穴が空いている場合は、いろいろ試せて楽しいものです。
     シズルの取り付けはドラムショップでもやってくれるところがあります。効果的な取り付け位置など相談しながらお願いすると良いでしょう。もちろん工賃は支払うのですよw!

    2-2)ジングルを取り付ける
     シズルの取り付け同様にシンバルに穴を開け、タンバリンやパンデイロのジングルを取り付けます。最近はこうした製品もありますね。ジングルの取り付けはネジ+緩み止めも良いですが、ハンドリベットや皮細工用のハトメが使えることもあります。ジャギジャギとした音になっていくので、割れたシンバルなどで実験程度にやってみるのが良いでしょう。小さなタンバリンをシンバルの上に置くだけでもかなり効果があるので、わざわざ穴を開けるほどのことは無いとも言えますね。

    2-3)追いハンマリング
     シンバル製作の工程では、ハンマリングはシンバルのシェイプ形成でもあり、倍音構成にも変化が出ます。シンバルの合金は炉から出すとポテトチップのようにグニャっとした形になっています。これをハンマリングして叩いていくと、叩かれた部分の金属の組成に伸びる力が発生するとかで、全面にまんべんなく叩いていくとその力がバランスしあってあのシンバルのシェイプになっていきます。2〜3回叩いたからといってグイグイ形が変わるわけではなく、叩き始めると途方も無い作業のように感じますが、回数を重ねると、段々その感覚が芽生えてきます。
     さて、追いハンマリングとは、製品としてひとつの形になりある程度時間経過を経たシンバルに、さらにハンマリングするというものです。私が以前手に入れたVintage Kには、このハンマリングの痕があったものもあり、部分的にクラックになっていたものもありました。おそらくもっと年齢を重ねたサウンドにしようとしたのでしょう。私も、スタジオの廃棄品500円で買ったクラック入りのシンバルなどで追いハンマリングしましたが、気がついた時にはやりすぎていました。
     注意すべきことは、シンバル製作の段階では焼いて柔らかいうちにハンマリングしていることです。手持ちのシンバルを焼き直せば、またグニャグニャになります。焼かずに叩けば、割れる可能性も充分にあります。
     カップの部分に少しハンマリングを足せば、倍音がより複雑になりそうだな...ボウのハンマリングを増やしたいな...ボウのシェイプを変えたいな...そんな気持ちがフツフツと湧いてきたとしても、追いハンマリングでできるのか...。ま、やってみたいと思っちゃいますよねw
     金床と先の丸いハンマーを用意し、シンバルを叩くというのは、なかなかシビアです。いずれにしろ、経年変化を進める方向にしかならず、音を枯れさせたりなかば半殺しにしてボリュームを落とすような行為でもあります。また、ジャズ用ライドにあるような大きな凹んだハンマリングの方法は私にはわかりません。
     また、ハンマリングについては以下のサイトも参考にしてみてください。かなり具体的に書いてありますし、このサイトを作っているCraig Lauritsen氏のシンバルは最近日本にも入ってきています。
    cymbalutopia(workshopのページ参照)

    2-4)オチョコにする
     シンバルのエッジに力をかけ、ベコッと向きを反対にしてオチョコにします。その状態で叩くとまた違ったサウンドになります。元に戻してまたオチョコにして...これは製造行程ではこれを行いながらハンマリングするような場合もあるのですが、使い古されたものでこれをやったときのダメージの結果は予想できません。パコーンと行った瞬間にお陀仏とか...!?しかし、これで音が枯れるんですよ、とベコベコやっていた知人ドラマーもいましたね。多少ダメージを追ったような音になっていた記憶がありますが、どこまで効果があったのかはわかりません。

    2-4)表面を削る
     シンバルを削るということに関しては、次項2-5のウェイトを落とすことが主だと思いますが、個人的にルックスの意味も含めて表面を削ったことがあります。メーカー品でもサンディング処理のようなものも出ています。
     レイジングというものがサウンドにどこまで影響を与えるか、これは多少都市伝説的な面もあるようで、正確なことはここでは言えません。経験的に、グラインダなどで荒く削ってみたものは、多少アタックが荒れるような気はしましたが、これが法則的なものなのかはわかりません。

    2-5)削ってウェイトを落とす
     シンバルのサウンド、そしてスティックに対するレスポンスを左右する大きな要素にシンバルのウェイト(重さ=厚さ)があります。もう少し薄くしたい、もう少しウェイトをさげたいというドラマーの欲求は多いと思います。薄手のシンバルは割れてしまうことが多いせいか、ヴィンテージ市場でもThinウェイトで状態の良いものは稀有といっていいでしょう。手に入れたシンバルに、もう少し薄いシンバル特有の色気が欲しいと思った時に、削るという方法があります。
     私も小出シンバルに伺うご縁ができたときに、ひとつお願いをしてシンバルをレイジングして薄くしてもらいました。音は見事に変わります。問題はどこで止めるか。私も体験的にやらせていただきましたが、旋盤にシンバルを取り付けバイトで削るのはかなりの重労働でした。なかなかうまく削れないのです。
     また、別のシンバルを自宅でグラインダやドリルの先に研磨用ディスクなどを付けて削ったこともありますが、まぁとにかくうるさいし、金属粉が飛び散るのでなかなか納得のいくところまで作業できません。また、かなり削ったつもりでも、数十グラム減るぐらいでした。ツイッターなどで知り合った方の中には、結構ハードな加工をしている方もいらっしゃいましたが、そういった加工に詳しいご様子。なかなか思いつきだけでは実行しにくいものではあります。

    2-6)穴をあける
     SABIANのO-ZONEなど、シンバルに大きな穴を開ているものも出ています。ウェイトは下がり、全体にしんなりしたディケイ&叩き心地になります。こうした加工をしているドラマーが知人にいますが、穴を開けるのは結構大変です。ドリルで下穴を開けて金属用のこぎりをつかうか、シャーシパンチなどを使っているのかもしれません。穴は円周上にいくつか並べて開けるのはなかなか大変ですね。

    2-7)ラッカーを落とす
     メーカー品のシンバルの中には、ロゴのプリントに加え、汚れ防止のラッカー処理がされているものが多くあります。このラッカーを落とすと、ハンドメイド系の無垢なシンバルのような自然さが出てくることがあります。とはいえ、メーカーによってこのラッカー処理に違いがあったり、落とせば同じ効果があるとは限りません。私はロゴを消したいと思って剥離剤でラッカーも落ちてしまったので、いっそ全部と思って落としたことがありますが、サウンドはナチュラルになるように感じます。ただし、手垢やホコリ等つきやすいです。
     昔は、シンバルを土に埋めておくと腐食して使い古したようなマイルドな音になると言われていたりしましたが、2〜3週間程度埋めてもそんなに簡単に変わってはくれず、埋めたままだとライブに持って行けないやんけ!とすぐに掘り出したのは私です。

    2-8)エッジをカットしてサイズダウン
     シンバルのエッジにヒビが入ってしまったときに、ヒビの部分も含めてエッジをカットすることもあります。一般的には、カップからエッジに向かってシンバルのは厚みが薄くなっていきますが、エッジをカットするとこの薄くなっていく比率が変わるため、ただサイズダウンだけではなく、ウェイトの分布の変化やエッジが厚くなったりします。
     経験からいうと、ものによってはカットしたことで中心部分が残っってピッチ感が高くなり、エネルギッシュな甲高いサウンドになったものもあります。これは日々の入ったシンバルをカットして小さなハイハットに出来ないかと思い実行したものです。単体としてクラッシュなどとして使うには、バランスが崩れすぎることが多いようです。カットするのは金ノコか、薄手ならば金鋏でザクザク切れなくもないですが、かなり危ないので革の手袋などで保護はくれぐれも忘れないように。
     また、カットして残った部分は、多少加工すればクラッシャーのように使えることもあるかもしれません。もっとアグレッシブに、エッジをガンガンカットしてギザギザにしたり、六角形にしたりというドラマーもいらっしゃいます。

    2-9)炙る
     これは窯で焼くということではなく、ガスバーナーで炙ります。ずっとやっていると赤くなってきます。表面は変色し、後日その部分を含めてカットしたところ、炙ったところはガラスのように硬くなっていて、切った部分が花崗岩の崩れた部分のように脆くなっていました。サウンド的には、やはり響きが死んでいく方向だと感じます。


    <まとめ>
     書いてみたらかなり控えめな文章になってしまいました。やはりなんだかんだ言っても特殊な世界だなと思います。やる人は人知れずやっているし、やらない人はやらない。そして公開することのリスクも感じます。初心者の方が、斜め読みして「削ったらオモシロクネ?」なんてなったらちょっと嫌だなぁ。
     シンバルって御神体みたいなところがあるんじゃないかと思うんです。もちろん楽器というものにそういうところがあるのですが、楽器様みたいになりすぎるのもどうかとは思うし、かと言ってイージーに量産できるものばかりではないですし、ヴィンテージなど貴重な楽器はこちらが大切に扱わないと、その価値を自分達の跡の世代に継げないですね。すべての物は所有するものではなく、自分が現世で借りているものであり、楽器は自分よりも長生きするものという考えも持っていたいものです。とはいえ昨今の量産型の楽器に対して、自分なりのカラーを持たせたいという気持ちも演奏者としてはある意味自然なものではないかとも思います。
     基本的に、音楽を成立させるという意味では、楽器の音を操り奏でるのはすべて奏法であり演奏内容であるべきです。しかしドラムセットの場合は、セットにした時のシンバル同士のバランス、シェルとのバランスがあり、特に現代の音楽ではサウンドもアレンジのうちであり、演奏するジャンルによって要求される音色そのものに意味があることも多いでしょう。その狭間でできることをやるということでしょうか。今回、シンバルカスタムでも改造でも無く、シンバルチューニングという言葉を使ったのは、そんな意味もあります。と、こじつけたところでこの項はおしまい。


    Ⅲ)シンバルの補修(メンテナンス)

     シンバルを加工するということで、最後にメンテナンス的なことも多少触れておきたいと思います。

    3-1)クラックの進行を止める
     シンバルを長く使っていると、エッジやセンターホールからヒビが入ってしまうことがあります。あぁ割れてしまったとがっくりすることもあるかもしれませんが、割れたシンバル独特のサウンドもあります。ただ、そのまま使っているとヒビが進行していくことが考えられるので、ヒビの先に丸く穴を開けます。こうすることで、そこからヒビが進みにくくなります。

    3-2)割れたエッジの処理
     前述のヒビや欠けのようなものができたときに、その部分をカットしてしまうという方法もあります。その部分を切除して、さらなる割れや扱い時の怪我を避けるため滑らかに仕上げた方が良いでしょう。

    3-3)汚れを落とす
     使っているうちに全体に色がくすんだり、シンバルを素手で触ると手の脂分などが跡になったりしてきます。こうして汚れていくとともに音がこなれていくので、そのままで良いという考えと、ステージではピカピカがカッコイイ!という考えもあるでしょう。ただ、手入れ不足で緑色の錆が出てしまったりするのはよくないので、まずは乾いた布で拭いておくくらいのことはしておきましょう。個人的には、まず風呂場で石鹸や中性洗剤を使ってお湯で洗ってみて、汚れがどれくらいのものかを判断するのが良いと思います。
     汚れが酷い場合は、クリーナーを使うと良いのですが、研磨剤の入っているものとそうでないものを区別して理解してください。前者は汚れを落とす洗剤や溶剤のようなもので、後者は液体の紙やすりのようなもので、細かく削って汚れを落とすものです。
     最近は前者タイプのクリーナーも良いものが出てきているようですので、ドラムショップの記事や商品などググってみると良いでしょう。豊橋シライミュージックは精力的にこうした動画やブログ記事をアップしていて、とても参考になりますよ。

    <まとめ>
     やはり文章だけだと辛いものもありますね。もっと練らないといかん部分もあり、書き忘れている項目もまだまだあるように思います。こういう内容だけに、ドラマー諸氏からのご意見もあるかもしれませんので、随時修正加筆が必要でしょう。時間を見つけて写真も加え、音楽とドラムのページに移せたらいいなぁと。また、もっと手前のシンバルについての知識も必要ですが、興味の有る方はCYMBALBOOK など読むことをオススメします!日本語でもこんな本があると良いですね。
     ま、この程度のことはとっくにやっているよ、という人もいるのです。ドラマー界の自作派には、かなりの強者もいらっしゃるようです。工作に強くならなくても良いとは思うのですが、楽器についてたくさん経験を積んでより望んだ音に近づいていける喜びは持っていたいなぁと思うのです。

     この記事は自分としては実験的なものなので、ご意見、事実訂正、その他情報などありましたらmail@makito.comへお願いいたします。読んで頂きありがとうございます。

  • 2012年08月02日
    シンバル・チューニングその1

  • シンバル・チューニングというカテゴリを考えてみようと思う。ま、この言葉は若干無理があるのも承知しています。しかし、ちょびっとワクワクするじゃないですかw 昔からいろいろなドラマーがいろいろ試しているものばかりですが、私の知らない方法もたくさんあるでしょうから、なにかあれば教えてくださいませw
  • まず、大きく2つに分けて考える。ノンディストラクタブルとでも言うべきだろうか、シンバルそのものには手を加えない方法と、シンバルに穴を開けたり磨いたり加工をするもの。前者は経年変化や使用感以外、元に戻せる方法であり、一般的にはこちらが望ましいだろう。後者は、一度やってしまうと元には戻せないし、ある程度の予想はあれど、それがうまくいくかどうかの保証も無い。しかし、すでにクラックがあるなどのダメージのあるシンバルであれば、実験的にトライしてみたくなるのも正直なところではないだろうか。無論、シンバル加工における怪我や事故には細心の注意を払うことも前提。
  • 構成は以下といったところ。
    Ⅰ)シンバルには手を加えない方法
    Ⅱ)シンバルに手を加える方法
    Ⅲ)シンバルの補修


    では、まずは非破壊的手法を。


    )シンバルには手を加えない方法

    1-1)テープ(響きをミュート)
     スネアやタムをガムテープでミュートするのと同様、裏側に貼る。ガムテープの場合、小片にしたり細く張り、場所や貼り方をいろいろ試す。ガムテでは効果が強すぎる場合、マスキングテープも良い。長く貼ったままにすると、テープの痕がベトベト→カチカチになって残るので、その都度剥がした方が無難。

    1-2)布をかぶせる(アタックを抑える)
     着なくなった古いTシャツなど、薄手の布をかぶせる。全面にかぶせると自宅での練習用防音レベルになり実践の演奏には抑えすぎになるが、布の形状やかぶせる面積による変化や、また打面側にかぶせることでチップ音そのものが抑えられる。

    1-3)紐をたらす(響きを抑える)
     少し太めの糸を数本、スタンドのネジのあたりから垂らす。叩くと跳ね上がるため初動のボリューム感はそのままだが、落ちてきてシンバルの響きを押さえてくれる。タムなどでも同様のふわりと浮かせてパタリと落ちてくるミュート方法あり。紐の太さ、重さ、本数などによって効果を調整。ライドなどスティックでヒットする場所をシンバルの真下と決めている人にとっては、紐をよけるのが叩きにくいと感じるかもしれない。

    1-4)風呂栓チェーンをたらす(シズル効果)
     ホームセンターやDIYショップなどにいくと、風呂の栓に使う数珠状のチェーンが数種類置いてあり、これをシンバルに垂らすことでシズル効果が得られる。チェーンの重さによってミュートされる面もあるので、長さ、数珠玉の大きさなどいくつか用意して試すと良い。数珠玉が小さいと、シズル音が繊細すぎてかえって聞こえないので、ある程度の大きさがあったほうが良い。糸で五円玉を結んで吊る方法も昔から言われていて、なにかしら金属なりがシンバルの上で踊るようにすると考えると、他にもいろいろ素材屋方法もあるだろう。また、費用を問わなければ、製品化されているものを使う手もあり、それらはやはり使い勝手がよく考えられている。

    1-5)釣り用の鉛の板を張る(ミュート効果)
     これは先輩ドラマー諸氏から聞いたことだが、釣りに使うオモリ用の鉛の板を両面テープで貼り付ける。この板には厚さに種類があるが、大概は手でちぎれるほどに柔らかく薄い。ガムテなどよりもミュート効果は強く、小指の爪の先ほどでもかなり強力にミュートされる。
     余談ですが、こうした板を打面側に貼り付けて、バスドラムのインパクトパッドのような、アタック増強パーツがあっても良いと思う。ナイロンチップがあるのだから、ナイロンでも良いのかも。問題は貼り付けると響きが止まることだけれども。将来的になにか出てきたら面白い。

    1-6)シンバルを重ねる(エフェクト系)
     重ねシンバルというものですね。某雑誌で特集をさせていただいたこともありましたが、手当たり次第に重ねてみると、いろいろな発見があります。形状や大きさの比率など、ある範囲の「使える音になりやすい重ね方」というのはあるのですが、意外な組みあわせで意外な音が得られることも。概ね、ガシャー、グワシャーといったエフェクティヴな刻み系の音が使われることが多いようですが、プロドラマーでも「この音をこう使うのか」なんていうケースもあります。
     クラッシュの上にチャイナ、チャイナにスプラッシュ、クラッシュの上に反対にしたスプラッシュなど、いろいろです。2枚の間に薄く切ったフェルトを挟んで間隔を調整するのもひとつのワザですね。

    1-7)スプラッシュを重ねる(エフェクト系&場合によってはミュート効果)
     重ねシンバルの種類になりますが、薄手のスプラッシュをクラッシュやライド、そしてハイハットに重ねると、形状のマッチングによってはカシャカシャーンとスプラッシュが踊る音が加わる場合と、スプラッシュのエッジが下のシンバルにぴったりくっついてミュートする場合があります。特にハイハットの場合には、これが超タイトでディケイを極端に押さえた音になることもあり、ガムテなどのミュートとは違った効果になります。

    1-8)ミニベルを重ねる(エンハンス系)
     豊橋のシライミュージック主催の小出シンバル・セミナーに関わらせて頂いたときに配れられたノベルティグッズの4インチのベルというものがあります。フィンガーシンバルというよりは大きく、ドラムセットに組み込むにはちょっと小さく、なにか良い使い方は無いかなと思っていた時に、シンバルの上や下に重ねて試した結果、今まで自分が試してきた重ねシンバルとは違う効果がありました。
     ポイントはボウの部分が小さく、カップ部分のみが重なるということでしょう。エフェクト系のサウンドにガラリと変わると言うよりは、シンバルのキャラクターに高域を足したり、カップの鳴りが2重になって基音が強くなるというような印象があります。ハイハットはキーンと届く音になり、ジャギジャギとしたジングルのような高域のシャリシャリ感が増えました。ライドの下に入れた場合、組み合わせによってはカップのパワーがかなり強くなりました。
     実測55gと100gの2枚で試しましたが、重ねるシンバルとの対比で薄めがよかったり厚めがよかったりするようです。微妙なラインですが、複数のドラマーに叩いてみてもらった結果、叩き心地の向上も感じる人が多かったです。
     これについては動画をYouTubeにアップしましたので、御覧ください。まだまだ実験が必要ですが、ライブハウスなど現場の音場の中でもう少し抜けの良さをプラスしたい、なんて場合にも良いかもしれません。重さ別に3〜4種類をパッケージで販売してくれたら、チューニング用アイテムとして重宝するかも!?

    動画リンク→
    小出4"ミニベルを使ったシンバルチューニングアイデア・ハイハット編
    小出4"ミニベルを使ったシンバルチューニング・ライド編

    1-9)セッティングによる違い
     シンバルをセッティングする角度もチューニングのひとつです。最近では少なくなりましたが、上から吊るしたほうが音が良いとセットしていた人もいました。教則本などでよく言われることは以下ではないでしょうか。水平にセットするのが一番平滑に鳴る、スティックの当たる角度が浅くなればディケイが長くなり、角度がつくとアタックが強くなるなど。
     レコーディングなどでは、叩いてシンバルが揺れることで起きるフランジングにこだわるという人もいます。ただ、見た目やパフォーマンス優先でセッティングする面白さもあります。
     また、セッティングするスタンドによる音の違いも大きく、ストレートスタンド、ブームスタンド、軽量なもの、重量のあるものなどで随分と変わります。ヘタに小細工するよりもこちらのほうが大事という考えかたもあるでしょう。

    1-10)スティック
     シンバルに限らずスネアやタムもそうですが、叩くものと叩かれるものの重さの比が音色に大きく関わってきます。もちろんストロークも含めてですが、スティックを変えることで、小槌からハンマーまであると考えれば、スティックを使い分けるドラマーが少なからずいることも不思議ではないでしょう。
     ダイヤモンドチップなどのスティックを使うと、どんなシンバルでもコツコツとPing音が繊細に粒立ち、ヴィンテージシンバルをレガートしているような音にもなります。スティックの太さ、長さ、チップの形状など、いくつか用意してシンバルを叩いてみれば、特にハンドハンマード系のシンバルでは違いが大きく出るでしょう。

    <まとめ>
     シンバルは倍音が多く出ていることもあり、演奏する場所、ドラムセットとの相性やチューニングの関係、演奏者の調子、奏法、共演者の状態などによって、聴こえ方が大きく変わってきます。たとえばスネアのピッチを高くするとハイハットやライドの感じ方が変わったり、スタジオやライブハウスなど場所の違いによって全然変わってきます。無論、こうした感じ方や聞き取り方にも経験によって削げてくるものはあります。最終的には楽器はなんでもいいとか、叩き手が出すんだという玄人な発言に到達するまでには皆あれこれやってきているのも事実かと思います。
     シェルものをチューニングする際に、その楽器の鳴りを引き出すという考え方がありますが、シンバルもあれこれやらずに朗々と響かせることが一番とも言えます。上記のようなことをあれこれ試した結果、元に戻して普通に叩いたら一番良かった、なんてこともあるものでしょう。しかしそれは、いろいろ試した結果自分の耳が気がついたことであり、ある意味では自分の耳と奏法のフォーカスがチューニングされたのかもしれません。

  • ここまで書くのに結構時間かかった...。で、シンバルに手を加える方法についてはのちほど。これ、写真載せたいけど、そこまでやると某雑誌になってまう...。写真付き音付きでどっかの雑誌か本にしても面白いのかも。
  • 2012年08月02日
    シンバル・チューニングというカテゴリ

  • 豊橋方面や大阪方面に御世話になりながら、最近の自分のシンバルに対する考えとか方向性がもう全然違うところに向かっていて、すごく面白い。
  • マキトシンバルと勝手に命名した、初めてハンマリングさせていただいた18インチ1587gは、アタックと響き、倍音の組み合わせはすごく気に入っていていつも使っているし、今年の6月に製作させていただいた14+14.5インチのハイハットも味があり、日を追って音も変化するので叩く度にいろいろな魅力を感じる。
  • ちなみに、浅草コマキ・ドラムシティにお願いしてDWに発注したマキトスネアというものもあり、それについてもとても気に入っています。スネアについて、そして6月の豊橋〜大阪〜シンバル製作についてもここに書かないと...時間が無いとか言っていたらアカンなぁ。
  • ここでひとつ言えるのは、自分が作ったものを良くないと言いたくないという心情がどこかに発生していて、良いと思い込もうとしていないかということである。まぁそこまで自分を信用してないし、いままで百枚単位でシンバルを叩いてきて納得できなかったのに、そんなに簡単に自分を騙せたら苦労しないとも言える(笑)
  • こういう言い方は語弊があるとも思うけれど、流行りの飲食店で食べても満足せず、家に帰って米を研ぎ水を測り飯を炊いて、鰹節や梅干しで頂いたらもう最高という感じなのだ。しかもマキトシンバルは、こなれた塩辛の「イカの身の端っこ」のちょっとコリッとしたところみたいなやつで、一般じゃないんだろうけど、やっぱうめぇんだよなぁ!という感じ。ドラムセットの音を白い飯としたら、シンバルが塩辛なのかもしれませぬ。
  • 実際、今でも新製品が出ればすべてとは言えないが、あちこちの楽器屋や雑誌の試奏などで楽器はチェックさせていただいている。しかしやはり家に戻ってきてみるとそこには白飯と塩辛が待っているのだ。フフフ。
  • さて、こうした自作ハンマリングのシンバルとドラムセットでいろいろ試しながら、そのつどデジカメで撮っては家に帰って確認してきました。動画にすると発見があっていいすね(今更)。ただ、そのデジカメだと音が割れちゃうのが難点でした。そこに渡りに船、某豊橋で数多くの動画を撮ってきたQ3HDを安く譲ってもらった。音についてもマイクを立てたり試したが、機材の運搬や準備など考えて、まぁQ3単体のフットワークの軽さに落ち着いてみたり。で、思いついたのが「シンバル・チューニング」というカテゴリ。
  • スネアやタムのチューニングやミュートのように、シンバルもテープを張ったりシズルをつけたりシンバルを重ねたりということは多くのドラマーがやってきたことです。おそらく自分が知らない工夫も多くのドラマーが山ほど試してきていることでしょう。シンバルは、買ってきたものをそのまま使うしか無いし、サイズを買えたり厚さを削ってウェイトを落としたり、焼いてもう一度ハンマリングしなおすなんてことは一般的には難しいものです。いわゆるスネアやタムにおけるチューニングの部分は無く、ミュートしたり、セッティングの角度や向きなどで変化をつけるところでした。
  • しかし、大阪の小出シンバルに伺ううちに、いろいろ小細工の範囲でならばドラマーも、自分のプレイスタイルや現場の音環境に合わせて多少の微調整ならばできるのではないかと思うようになってきた。そして、最近ではメジャーメーカーからも多様なエフェクトシンバルや遊び心のあるシンバルも多くなってきていて、伝統的&楽音的なフルボディサウンドとは別のところで、ドラマーに寄るパーカッシブかつ多彩な表現のパーツとなる「金物サウンド」への欲求が高いのも事実だと思う。
  • 自分の家でハンマリングの環境を持ったり、グラインダーや旋盤、自作ピザ窯のような焼き窯を持つことの手前に、いろいろできることがある。シンバルそのものに手を加えずに行う方法、少し手を加える方法、その違いはあるけれど、これらを「シンバル・チューニング」としてとらえてみようと思う。ライブハウスなんかで「もうちょっとこうしたい」なんて気持ちを少しでも解消できたら良いなと思うし、そうこうしているうちに「実はスティックやグリップ、ストロークで全部自分でコントロールできるんじゃん」というところに行けばそれもまた良し。ということで、具体的には次のエントリで。