makito's voice

2012年08月02日
シンバル・チューニングその1

  • シンバル・チューニングというカテゴリを考えてみようと思う。ま、この言葉は若干無理があるのも承知しています。しかし、ちょびっとワクワクするじゃないですかw 昔からいろいろなドラマーがいろいろ試しているものばかりですが、私の知らない方法もたくさんあるでしょうから、なにかあれば教えてくださいませw
  • まず、大きく2つに分けて考える。ノンディストラクタブルとでも言うべきだろうか、シンバルそのものには手を加えない方法と、シンバルに穴を開けたり磨いたり加工をするもの。前者は経年変化や使用感以外、元に戻せる方法であり、一般的にはこちらが望ましいだろう。後者は、一度やってしまうと元には戻せないし、ある程度の予想はあれど、それがうまくいくかどうかの保証も無い。しかし、すでにクラックがあるなどのダメージのあるシンバルであれば、実験的にトライしてみたくなるのも正直なところではないだろうか。無論、シンバル加工における怪我や事故には細心の注意を払うことも前提。
  • 構成は以下といったところ。
    Ⅰ)シンバルには手を加えない方法
    Ⅱ)シンバルに手を加える方法
    Ⅲ)シンバルの補修


    では、まずは非破壊的手法を。


    )シンバルには手を加えない方法

    1-1)テープ(響きをミュート)
     スネアやタムをガムテープでミュートするのと同様、裏側に貼る。ガムテープの場合、小片にしたり細く張り、場所や貼り方をいろいろ試す。ガムテでは効果が強すぎる場合、マスキングテープも良い。長く貼ったままにすると、テープの痕がベトベト→カチカチになって残るので、その都度剥がした方が無難。

    1-2)布をかぶせる(アタックを抑える)
     着なくなった古いTシャツなど、薄手の布をかぶせる。全面にかぶせると自宅での練習用防音レベルになり実践の演奏には抑えすぎになるが、布の形状やかぶせる面積による変化や、また打面側にかぶせることでチップ音そのものが抑えられる。

    1-3)紐をたらす(響きを抑える)
     少し太めの糸を数本、スタンドのネジのあたりから垂らす。叩くと跳ね上がるため初動のボリューム感はそのままだが、落ちてきてシンバルの響きを押さえてくれる。タムなどでも同様のふわりと浮かせてパタリと落ちてくるミュート方法あり。紐の太さ、重さ、本数などによって効果を調整。ライドなどスティックでヒットする場所をシンバルの真下と決めている人にとっては、紐をよけるのが叩きにくいと感じるかもしれない。

    1-4)風呂栓チェーンをたらす(シズル効果)
     ホームセンターやDIYショップなどにいくと、風呂の栓に使う数珠状のチェーンが数種類置いてあり、これをシンバルに垂らすことでシズル効果が得られる。チェーンの重さによってミュートされる面もあるので、長さ、数珠玉の大きさなどいくつか用意して試すと良い。数珠玉が小さいと、シズル音が繊細すぎてかえって聞こえないので、ある程度の大きさがあったほうが良い。糸で五円玉を結んで吊る方法も昔から言われていて、なにかしら金属なりがシンバルの上で踊るようにすると考えると、他にもいろいろ素材屋方法もあるだろう。また、費用を問わなければ、製品化されているものを使う手もあり、それらはやはり使い勝手がよく考えられている。

    1-5)釣り用の鉛の板を張る(ミュート効果)
     これは先輩ドラマー諸氏から聞いたことだが、釣りに使うオモリ用の鉛の板を両面テープで貼り付ける。この板には厚さに種類があるが、大概は手でちぎれるほどに柔らかく薄い。ガムテなどよりもミュート効果は強く、小指の爪の先ほどでもかなり強力にミュートされる。
     余談ですが、こうした板を打面側に貼り付けて、バスドラムのインパクトパッドのような、アタック増強パーツがあっても良いと思う。ナイロンチップがあるのだから、ナイロンでも良いのかも。問題は貼り付けると響きが止まることだけれども。将来的になにか出てきたら面白い。

    1-6)シンバルを重ねる(エフェクト系)
     重ねシンバルというものですね。某雑誌で特集をさせていただいたこともありましたが、手当たり次第に重ねてみると、いろいろな発見があります。形状や大きさの比率など、ある範囲の「使える音になりやすい重ね方」というのはあるのですが、意外な組みあわせで意外な音が得られることも。概ね、ガシャー、グワシャーといったエフェクティヴな刻み系の音が使われることが多いようですが、プロドラマーでも「この音をこう使うのか」なんていうケースもあります。
     クラッシュの上にチャイナ、チャイナにスプラッシュ、クラッシュの上に反対にしたスプラッシュなど、いろいろです。2枚の間に薄く切ったフェルトを挟んで間隔を調整するのもひとつのワザですね。

    1-7)スプラッシュを重ねる(エフェクト系&場合によってはミュート効果)
     重ねシンバルの種類になりますが、薄手のスプラッシュをクラッシュやライド、そしてハイハットに重ねると、形状のマッチングによってはカシャカシャーンとスプラッシュが踊る音が加わる場合と、スプラッシュのエッジが下のシンバルにぴったりくっついてミュートする場合があります。特にハイハットの場合には、これが超タイトでディケイを極端に押さえた音になることもあり、ガムテなどのミュートとは違った効果になります。

    1-8)ミニベルを重ねる(エンハンス系)
     豊橋のシライミュージック主催の小出シンバル・セミナーに関わらせて頂いたときに配れられたノベルティグッズの4インチのベルというものがあります。フィンガーシンバルというよりは大きく、ドラムセットに組み込むにはちょっと小さく、なにか良い使い方は無いかなと思っていた時に、シンバルの上や下に重ねて試した結果、今まで自分が試してきた重ねシンバルとは違う効果がありました。
     ポイントはボウの部分が小さく、カップ部分のみが重なるということでしょう。エフェクト系のサウンドにガラリと変わると言うよりは、シンバルのキャラクターに高域を足したり、カップの鳴りが2重になって基音が強くなるというような印象があります。ハイハットはキーンと届く音になり、ジャギジャギとしたジングルのような高域のシャリシャリ感が増えました。ライドの下に入れた場合、組み合わせによってはカップのパワーがかなり強くなりました。
     実測55gと100gの2枚で試しましたが、重ねるシンバルとの対比で薄めがよかったり厚めがよかったりするようです。微妙なラインですが、複数のドラマーに叩いてみてもらった結果、叩き心地の向上も感じる人が多かったです。
     これについては動画をYouTubeにアップしましたので、御覧ください。まだまだ実験が必要ですが、ライブハウスなど現場の音場の中でもう少し抜けの良さをプラスしたい、なんて場合にも良いかもしれません。重さ別に3〜4種類をパッケージで販売してくれたら、チューニング用アイテムとして重宝するかも!?

    動画リンク→
    小出4"ミニベルを使ったシンバルチューニングアイデア・ハイハット編
    小出4"ミニベルを使ったシンバルチューニング・ライド編

    1-9)セッティングによる違い
     シンバルをセッティングする角度もチューニングのひとつです。最近では少なくなりましたが、上から吊るしたほうが音が良いとセットしていた人もいました。教則本などでよく言われることは以下ではないでしょうか。水平にセットするのが一番平滑に鳴る、スティックの当たる角度が浅くなればディケイが長くなり、角度がつくとアタックが強くなるなど。
     レコーディングなどでは、叩いてシンバルが揺れることで起きるフランジングにこだわるという人もいます。ただ、見た目やパフォーマンス優先でセッティングする面白さもあります。
     また、セッティングするスタンドによる音の違いも大きく、ストレートスタンド、ブームスタンド、軽量なもの、重量のあるものなどで随分と変わります。ヘタに小細工するよりもこちらのほうが大事という考えかたもあるでしょう。

    1-10)スティック
     シンバルに限らずスネアやタムもそうですが、叩くものと叩かれるものの重さの比が音色に大きく関わってきます。もちろんストロークも含めてですが、スティックを変えることで、小槌からハンマーまであると考えれば、スティックを使い分けるドラマーが少なからずいることも不思議ではないでしょう。
     ダイヤモンドチップなどのスティックを使うと、どんなシンバルでもコツコツとPing音が繊細に粒立ち、ヴィンテージシンバルをレガートしているような音にもなります。スティックの太さ、長さ、チップの形状など、いくつか用意してシンバルを叩いてみれば、特にハンドハンマード系のシンバルでは違いが大きく出るでしょう。

    <まとめ>
     シンバルは倍音が多く出ていることもあり、演奏する場所、ドラムセットとの相性やチューニングの関係、演奏者の調子、奏法、共演者の状態などによって、聴こえ方が大きく変わってきます。たとえばスネアのピッチを高くするとハイハットやライドの感じ方が変わったり、スタジオやライブハウスなど場所の違いによって全然変わってきます。無論、こうした感じ方や聞き取り方にも経験によって削げてくるものはあります。最終的には楽器はなんでもいいとか、叩き手が出すんだという玄人な発言に到達するまでには皆あれこれやってきているのも事実かと思います。
     シェルものをチューニングする際に、その楽器の鳴りを引き出すという考え方がありますが、シンバルもあれこれやらずに朗々と響かせることが一番とも言えます。上記のようなことをあれこれ試した結果、元に戻して普通に叩いたら一番良かった、なんてこともあるものでしょう。しかしそれは、いろいろ試した結果自分の耳が気がついたことであり、ある意味では自分の耳と奏法のフォーカスがチューニングされたのかもしれません。
  • ここまで書くのに結構時間かかった...。で、シンバルに手を加える方法についてはのちほど。これ、写真載せたいけど、そこまでやると某雑誌になってまう...。写真付き音付きでどっかの雑誌か本にしても面白いのかも。