makito's voice

2013年09月17日
道迷い

  • 昨年の9月ぶりに山に入った。いや、入ったもなにもって感じの距離ではある。歩き始めて早々、出鼻を挫かれるようにプチ遭難。雷雨が来て、久しぶりもあって体力も落ちてる。キツかった。その後数日は、日が経っても身体はガタガタ。四苦八苦の名残り。
  • 絶望というものにはまだ程遠いものだったとは思うけれど、深刻かつ心の折れる事態であったのは間違い無い。あのままどうかすれば、あっという間に遭難なのだろう。食料、水、乾いた衣類、屋根や寝床など装備は充分にあった。しかし確実に道迷いし、気力も体力もあっという間に底をついて、パニックのランプが点灯したのは事実。
  • あの距離で、あの短時間で、遭難は起こりうると感じた。都会のマンションで、隣の部屋で人が死んでるのに気が付かないなんてのに似てるのかも。違うか(笑)脱出後、地元に人に話を聞いたら、2日間捜索して救出という遭難事故があった場所ではあるらしい。しかし、何をどう間違ったのか、ともすればもう一度入ってしっかり検証したい気持ちもある。
  • 小出シンバルとサカエリズムにお世話になった後、高野山へ向かった。その日は奥の院で野宿。奥の院は素晴らしい場所だった。日が落ちる寸前に行ったのだけれど、なんというか初めての感触だった。その夜は満月の1日前で、月を眺めながら一晩を過ごした。途中で頭を丸めた年のいった女性の方に「野宿?これ食べな」と言っておにぎりをいただき、お大師様の話を1時間ほど聞かせていただいた。親の世話をしながら、どこかの寺に身を寄せているようであった。
  • 翌日は、荒神さんにお参りして、そこから伯母子峠に向かうつもりだった。予約制というふうに言われていた荒神ラインのバスは、実際には高野山駅からわりと定期便のようにして出ていて、客がないと走らない、というよりは座席確保のための予約というように見えた。10時になってようやくバスの時間。1日に2本の往復。小一時間、歩けば結構な距離を走って立里荒神社前に到着。あっけない。お参りする。良い場所だなぁ。無数の鳥居をくぐって登りながら、おばちゃんに話しかけられる。なんどもお参りしているようで、前回お願いをしたことが無事に終了したので御礼に来たという。話を聞いていると、またお大師様の話になった。皆信仰されているだなぁ。お参りを済ませた後は、下りのバスで途中まで行き、そこから歩いて伯母子峠へと思っていた。奥の院の観光案内で、歩ける距離かと聞いたら、ここ(奥の院)から歩いて、あそこで野宿されるかたがいますよというので、そんなに近かったかなと思いつつも、まぁ行けるかなと。

    荒神さん到着。

    上がっていきます。どんな神社なのかは、皆さん行ってみてくださいw

  • バスの時間まであと1時間あった。また暇つぶしか。昨晩駐車場でさんざん暇つぶしをしたので、歩きたかった。で、林道を歩いて行こうと思ったがが、地図には、ぐるりと廻る林道をショートカットし、バス下車位置よりも目的地に近いところに出る線があった。しかしまぁ、小辺路を歩いたときもそうだったけれど、道が不明瞭なことが多いし、実際どんなもんかなと。で、地図にある場所に行ってみると、駐車場から降りるような形で、コンクリで階段も作ってあり、かなり道の様相を呈していた。これは行けるかな...ちょっと歩いてみたら、快適だった。こりゃ道になってるし、行けるなと。
  • 途中、ちょっと不明瞭になると、少し先に道がすぐ現れた。そんな感じでどんどん進む。しかし、ちょっと急斜面になってきた。しかし、明らかに踏み跡や道だった形跡がある。んでもって更に進んだ。ザザザッという音で鹿が現れたあたりで、あーなんだかテリトリーが変わってきたなと感じ、熊らしき糞も見かけるようになった。歩いていた感触では、あと3割というところまで進んでいたと思う。地形的にも、沢の流れ的にも。しかーし。だんだん敗色濃厚になってきた。あちゃー。つっきればなんとか...と思うのだが、道が現れるような様子も無い。うーん。小さな休憩を何度も挟みながら、そのたびに周囲をよく見た。後ろを振り返ったときに、あー...これ戻れるかな...と。
  • 実際、戻るのは難しいだろうと感じていたので、葛藤が始まる(笑)いや、とっくに始まってはいた(笑)で、ついにこりゃもう進むのはアカンと思ったところで休憩。そして、しょうがねえなぁと思いながら戻ることにした。しばらく戻る。あれ?こっちだっけどっちだっけ?登ってみる。戻る。登ってみる。それにしてもくたびれている。荷物も身体も重い。そして、なんだか斜面がキツくて休む場所が無い。なんども滑ったり木につかまってよじ登ったり。ま、バリエーションルートを歩くような人からすれば、なんてことは無い場所だったろう。しかし、現実に自分がくたばっていたwww
  • そうしているうちに、雷雨が来た。結構振りつけてくる。レインウェアを着て休憩がてら様子を伺う。雨のせいもあって、自分の踏み跡とかちっともわからん。地形を見ながらひとりブツブツ思う。まだ時間も早かったけれど、かったるいのでどこか場所見つけて焚き火でもしてここで寝ようかとも思ったり。でもまだ14時前だったし、雨はやまなかったけれど、動こうという気になって、また登る。尾根を越えようとすれば、また尾根が出てくる。ま、結構な勢いでどんどん下がったからなぁ。同じだけ登らにゃならんわけで。そうしていよいよ空が間近に見えてきた。そこから数段上がって、なんだか金網と人口建築物が見えてきて、そこまで行ったら、あとはすぐに林道だった。林道が見えたとき、最後のバスが通って行った。結局のところ、2時間半程度のことだった。林道に着いてホッとして座ると、また雨がザンザン降ってきたが、もう別になんも気にならん感じでグダーっとなった。
  • その晩は満月。あぁ、この天気で満月で伯母子峠で過ごしたかったなぁ...。林道を下に降りて伯母子峠に行く方法が残されていないか探ってみる。市役所の方にいろいろ教えてもらったりしたが、結局荒神社に泊めてもらうことにした。また林道を登って戻るのか、と思っていたらお寺の方が来るまで拾いに来てくれた。まだ4時くらいだったけれど、他に客はおらず、大変だったでしょう、お風呂も入れてありますと至れり尽くせりだった。参籠所ということで作られたようで、まだ新しい。部屋は綺麗で液晶テレビもダイキンのクーラーもついていた。風呂に入ってみたら身体がヘロヘロでダメダメだった。
  • 住職さんだったのだと思うのだが、車に載せてもらったときに話をしたら「あぁあのあたりは以前にも捜索隊が出て2日目に見つかるという遭難もあったんですよ」ということだった。2年前の台風もあって、今は道が荒れて熊も出るようになってきているという。そして、翌日は雲海が見れると思いますよ、と教えていただいた。あぁ、つくづく、伯母子での満月と朝の雲海を逃したのだなと、表層的な気持ちを自分で反芻しながら、しかしこのダメージはなんなんだろうかと考えてみる。
  • これ、山のダメージじゃないな。という自己分析。現実的には、風呂に入って泥だらけの服や装備を綺麗にして、たくさん水分を取ってひと落ち着きしてみると、自分がどんだけヘトヘトになっているかがわかった。だらしない。結局身体が動かないだけか。とはいえ、ダメージの本質はそこなのだろうか。成り行きというものの本質的な力をどこかで信じている自分と、成り行きを嫌って計画的に成功体験を積み上げたい自分のぶつかり合いは、道迷いで1人で焦ってヘトヘトになって、煩悩まみれが寺に泊めてもらって頭冷やすという結果になったわけでw でも、荒神さんで過ごした時間はすごくよかったことと、翌朝の雲海も素晴らしかった。

    荒神さんの入り口にある参籠所。一般の人でも普通に泊まることができます。今回は、他にお客さんがいないので食事の準備ができてないけれどと言われましたが、美味しい食事を出していただきました。

    雲海。日が昇ってきて美しい。あー良いカメラ欲しいw

  • 伯母子峠へのリベンジは、また来年に繰越かなぁ。紀伊山地は奥深いなぁ。成り行きでどうなる場所ではないと思いつつ、しかしできれば徒歩で行きたい。そうそう、翌日高野山に戻るときに、自分が降りていった場所から、這い出て登ってきた場所までを調べてみたら、ずいぶんと違うところに出てきていて、あぁこりゃアカンなと。単純に体力と技量の低さが出ただけのことで、まったくしょうもない。心の反省よりも、実力を身につける行動が必要。あぁもうすべてにおいてそうだなと。