2011.08.23〜24 和歌山・高野山〜有田川 その2


和歌山・有田川を下る
〜その2 高野山からあらぎ島へ〜


 ま、なんやかやでとにかく歩こうという気持ちで準備。周辺を調べたり地図をプリントアウトしたり。出かける日はあっさり寝坊。目覚まし時計が壊れていて(これは本当)、致命的な時間ではなかったのでとにかく家を出る。

 大雨の影響で静岡あたりで足止めも食らったが、平日の昼間、電車の中は空いていて、いろいろ思索に耽るには最高だった。数年前に自分の父親の友人の方から送られてきた手紙というのを母親から受け取っていたので、それを読む。戦時中の話からその後まで。自分しか乗っていないような車両、静けさの中でその文章が訴えかけてくるものに感じる所が大きかったが、自分が知らない当時の様子というものを今に投影してみて、どんな感じなのかと反芻してみたり。良い時間だった。と、自分のこととして終わらせるのは悪い癖だ(笑)

 大阪に着いたのは夕方のラッシュ時で、環状線から和歌山に行く電車は東京となにも変わらない満員電車だった。都市部はどこも一緒だなとも思ったが、駅構内などを歩いているときに、東京のようには人がぶつかってこず、お互いに気配を感じ合いながら半身で避けるような動きが多いことには、なんだかこっちのほうが人間ぽいなと思う。まぁ余所者の匂いプンプンでザックを背負ってる自分をみんなが避けただけとも言えるが。

 高野山に登るケーブルカーは遅くまで運行している。それだけの人の行き来があるということなのだろう。あとで聞いた話だが、高野山に住んでいて仕事や買い物で外界に降りるということもあるようだ。実際行ってみてわかったが、大きな街になっていて、その中に神社仏閣が立ち並んでいる。観光地として有名なところではあるが、ケバケバしくなく、なにか地の力を感じさせるとても気持ちの良いところだった。

 夜はずっと雷が光っていた。音はほとんど聞こえず、しかし頻繁に光る。深夜にパラッと雨も降っていた。4時頃から散策を始める。明け方の神社ってのもいいものだ。弁財天のある公園のベンチで朝飯。コーヒーやらラーメンやら。そして大門まで行ってからまた戻りながら神社をいくつか参拝。そして街を離れて371号線へ入る。どんな景色が待っているのか楽しみにしながら、ゆっくり歩く。なんだか楽しい。

暗くなっても動いている高野山へのケーブルカー!

もうどこも開いてません。

夜は雷が光って少しだけ雨。日が昇る。

この公園の裏側に弁財天があります。

ベンチで朝飯。

大門から南側の景色も良かった。

高野山へはまた改めて御参りに来よう。

 371号線は川沿いの林道になっている。舗装もされているので、山歩きというよりはただ普通の歩きだ。緩やかに下りながら、右に左に現れる川の様子を見ながら、なんも考えずに歩く。今回はこの「何も考えずに歩く」というのがよくできたのではないかと思う。ハッキリ言ってたいした目的は無いのだ。もちろん自由気ままに山の中を川を見ながら歩くのは自分にとって楽しいものではあるが、暑くて汗もかきバイクや車の爽快感もなく、途中に気の利いた飯屋もなければ居酒屋も無い。

 今回、自分の中でなにかを確かめたい気持ちもあった。満足というものがどこから湧いてくるのか、というものだ。なにか特別なものを達成していなくても得られる満足感というものは、人生の中にいくつもあるとは思う。しかし、そこにはやはり物を得るとかなにかの成果が出るとか得をするとかいい気分になるとかあるわけで、まぁ今回のように歩くのは確かに都会からの解放といえばそうなのだが、それにしても実際歩くシンドさを考えると、ようわからん。

 川は、高野山を出てすぐのところでヤマメのような魚影を見ることができた。砂防堰堤というのだろうか、治水工事も多く施され、降りるほどに生気が感じられないようにも思えた。山のあちこちから湧き水が集まり、川の流れは早くなったり緩くなったり。時折降っていた雨も上がり、だんだん暑くなる。

高野山から371号線を歩く。川沿いの舗装された林道。

山の距離感ってのは地域によっていろいろ。

時折ヤマメらしき魚影も見えた。

水源ということもあるのか、基本的に要所要所に治水工事がかなり施されている様子。ちょっと残念

貯水。

なにかこう生きている川の表情ではないかもしれない。

川の小石を持ち上げてみるがあまり虫がいない。

高低差や砂防堰堤によって流れはいくらでも変わる。

これは湧き水。あまり冷たくはなく水に香りがある。

川についてはもっと勉強しないとなぁ。

このあたりから禁漁の看板が多くなる。

雨がチラホラ降っていたが、ようやく落ち着き今度は暑くなる。

 時折道路は開けたようになり、木工の工場みたいなものや民家、神社、学校なども見かけた。源流的な流れは林道から離れ、渓谷のような流れを見せ始める。急峻な山の谷間に流れる川を見ると、いずれ沢登りの装備で遡行もしてみたいと思う。かなりハードだとは思うけど。

 自分の持っていた地図には載っていない、しかし道路としては大きな分岐がありちょっと迷う。まぁ結局のところ「まだこれしか歩いていないのか」という事実と共にルートは判明するが、橋から川に降りて休憩。まだ昼までも時間があったように思う。釣りでもできるんじゃないかというような場所だったので、防水カメラで水中を撮ってみた。帰ってきてから見たら、小さな魚が写っていた。

 さて昼を目安にと思っていた場所を目指す。花園グリーンパークというものだっった。観光パンフの謳い文句的には、道の駅的な匂いがしたので、売店や食堂もあるのかもしれないと思い、またこのあたりにオートキャンプ場などもいくつかあって、少し賑やかそうな感じ。ところがオートキャンプ場はクローズ、グリーンパークも休館だった。ガビーン。まぁ水もたっぷりあるので困らないがつまらない。そういえば朝に買っておいたビールがあったとザックから取り出し、灼熱の太陽の下で赤貝の缶詰と一緒にいただいた。うまかった。

 で、またしばらく歩く。なにやら人気のない民家の前に、赤茶けた低木が見える。というか道すがらずっと目に入っていた。近寄ってみると山椒だった。緑の実は黄色〜赤に変色していたが、潰してみるとまだ水分も残っている。かじってみたらやはり山椒だった。あとで知るのだが、このあたりは山椒の産地らしく、やがて畑が増えてくると歩いているだけで山椒の香りがしてくる。春先には花山椒も取れるのだろうか。ええなぁ!

 ここでバス停が目に止まり、よく見るとあと15分くらいするとくるようだ。で、乗ってみたら終点まで大して距離がなかったことがわかり、残念なようななんといか。降りたところでは鮎釣りの人たちがいて、店もやっていた。西浦旅館というところが暖簾が出ていたので入ってみると、家族で昼ごはん中だった。そのそうめんがたまらずうまそうだったが、メニューにあった焼きそばを食う。そしてよく冷えたスイカをわけてもらった。これは本当にありがたかった。やっぱ暑い中、アスファルトの上は照り返しもあるので、山の中を歩くよりものどが渇くように思う。いやぁごちそうさまでした。おばちゃんありがとう。

だいぶ開けてくる。しかし市街地はまだまだ。

谷間が深くなり川が遠くなる。

川を遡行するという手もあるが。

橋のある分岐点。川に降りて休憩。

小さな魚がときどき見える

防水カメラで無作為に撮ったが、小さな魚が写っている。

林道と川がやや離れる。あそこに降りたい。

急峻な山の中に川が流れる。

キャンプとかしたいなぁ。

集落がチラホラ。

オートキャンプ場は営業していない。

キャンプ場の横。マムシ注意。

グリーンパーク。ここで昼飯と思ったが、すべて休館。

赤貝の缶詰がなにげにパワー出るw

誰も住んでいないと思われる民家の前。山椒の身。

あまりの暑さもありバスに乗って花園へ。

鮎釣りの人がいた。バーベキューやっとる。

お店で焼きそばを食べたら、スイカをサービスでいただいた!これはうまい!

おばちゃんありがとう!ありがとう!


 このあたりは鮎釣りをしに来る場所のようで、何人もが広い範囲に散らばって思い思いに竿を振るっていた。いい景色だけれど、釣ってる人はなにやら難儀そうに見える。どれくらい釣れるものなのかと思って聞いてみると、今年は稚魚の放流後に立て続けに台風やらが来て、全然よくないと言っていた。

 田んぼが増え、林道は上下高低差も出てくる。これから向かうのは先日テレビ番組で見た、自然農法をやっている方の住む集落。番組を見ながら「素晴らしい活動をされているなぁ」「山々の景色が素晴らしいなぁ」「あれ有田川を歩くコースの近くだ」と思い、ちょっと寄ってみることに。山の方に入っていくと個人的に好きな風景が広がる。道すがら農家の方々が話しかけてくれ、高野山から歩いてきたというと笑っていた。ここで風景を見ながら思ったのは、本気の場所だなぁということだった。家の近くの菜園を借りて日曜ごとに手入れに行く、なんてものではない。一切合切が山の中であり、古くから住む集落の中である。何年かの準備の末行動に移されていることは明白で、まぁテクテク歩いているのんきな自分が「山はいいなぁ」なんて言っているのとはやはり違う。そりゃドラムに置き換えればすぐにわかることだ。まぁしかし良い雰囲気のところだった。

鮎釣りは難しそうです。竿も高いのがあるとか。

どれくらい釣れるものなのか。友釣りは面白いと聞きました。

穏やかな川の表情。最高です。

家の近くにあったら最高だろうなぁ。

かなり広範囲にわたって鮎釣りの人をみかけます。

暑いので泳ぎたい...

田畑が多くなってきました。

集落、田んぼ、川、道路。

なにやらすごい陸橋ではある。

道は登ったり下ったり。

川がぐるっと回ったところに田んぼが。

酒屋があったのでビールとガリガリ君を補充w

川沿いを下りながら、ちょっと寄ってみたかった場所に近づいてきました。

山の方へ入って行きます。良い景色。

こんな眺め最高だなぁ。

道路と家屋の距離感がいいです。

ええなぁ〜

ええですなぁ〜

川というより用水路的な意味合いなのでしょうか

 頭の中でプランしていたのは「あらぎ島」のある清水まで降りることだった。農家の人に聞いたら「頑張れば1時間でつくよ!」と笑われたが、実際10kmくらいの距離だった。2時間歩いてちょうど夕方。まぁ悪くないペースだと思いながら歩いていると、軽トラが止まってお爺ちゃんが「なーにやっとるの」と言う。「歩いてんですよ」というと「乗ってけ。どこまでじゃ」という。この爺ちゃんは清水のスーパーまで買い物というのだが、もう90歳を超えているという。話はもちろん運転もしっかりしている。軽トラの荷台にはビールが積まれていた。途中でいい景色があったので、降りようかとも思ったが、話はじいちゃんの戦時中の話。実に興味深く、笑い話のように話してくれるが、実に重たい話でもあった。結局清水の温泉前まで連れていってもらい爺ちゃんが「あんたと話せてよかったぞぉ」なんて言っていたのが、どうにも調子が良すぎる感じだなと思いながらも、あの健康さはどこからくるのだろうと思って感心させられた。

 しみず温泉は入浴料600円。いいお湯だった。広い休憩室で携帯を充電したりしながら地図を広げる。頑張れば1時間で、と言われたが、もうすでに風呂入ってサッパリだ。文明とは便利なものだ。近くのキャンプ場にシェルターを張るかと思ったが、少し散策し翌日の行程を調べようと飲食店に入った。モダンで綺麗な店内で、酒飲みも好きそうな内装。鮎の塩焼き定食を頼むと「しばらく焼くのに時間がかかります」という。実際結構待ったが、これで絶妙な焼き加減だった。花山椒の佃煮みたいなものが美味でありました。そしてスーパーに行って食料を補充してあらぎ島までは行くことにする。

 あらぎ島は大きく曲がった川の丸い部分が綺麗に棚田になっており、見てみたいと思っていた。清水からはほどない距離だったが、あたりはグングン暗くなり、展望所に付いたときには、うっすら見える程度。まぁ明日の朝が楽しみということで、本日はここで就寝。その顛末はまた続きに。

(その3〜生石高原から海南へ〜に続き。)

そしてまた有田川沿いを進みます。このあとおじいちゃんに拾われて戦争の話を聞かせてもらいながら車にのっけてもらいました。

温泉ならここに行きなさい!と言われしみず温泉に。良いお湯でした。

なんだかんだ中流〜下流の様相です。

清水にはキャンプ場も温泉もスーパーもお店もいろいろありました。

鮎定食。これは絶品の焼き加減でした!

食事処「赤玉」なかなかおしゃれな店内でした。

あらぎ島に向かいます。

日が暮れてきました。

夕刻の川の音ってのは怖くもあり。

あらぎ島までもうすぐ。

どっぷり暮れてきました。

あらぎ島の展望所。眼前に棚田が広がっています。明日の朝が楽しみ。


( 2011/09/06 )